メンテナンス

緊急事態!! 電流計が振れません!

電子管式の高周波発振機には高周波の出力を示す。
3つのメーター『陽極(アノード)電圧計、陽極(アノード)電流計、格子(グリッド)電流計)が設置されていると思います。
# このメーターを監視していると発振機の状態を色々と知ることができます。

今回は、『陽極電圧計だけが振れ、陽極電流計と格子電流計が全く振れない場合』故障例を順を追って見て行きたいと思います。

ホントに振れてない?

まず本当に2つのメーターがピクリとも動いていないでしょうか?

これを確かめるために、発振機が自動機と繋がっているのであれば、
発振機単体で動かすようにします。
(発振機単体で動かせない場合は、各個運転で以下のチェックを行ってください)

捨ててしまってもよいワーク、もしくはダミーのワークを用意して下さい。
おそらく何度も加熱を繰り返しますのでペケ品になってしまいます。

加熱コイルにワークをセットし、加熱出力は『0ゼロ』にセットして下さい。
もし加熱タイマーが入っている場合は、30秒程度にセットします。
あと、メーターリレーにより『出力設定以下』が検出されるようになっている場合は、
この設定を指示針より低く設定してください。
準備は、これくらいでしょうか、ここから手動で加熱ONにしていきます。
加熱ON後、徐々にボリュームを上げていきますが、この時3つのメーターに注意をしてください。
陽極電圧計が少し上がり始めたところで、残り2つのメーターはどうでしょうか?
まだ振れていませんか?
では、もう少しボリュームを上げていきます。
陽極電圧計が1kVを指すぐらいでは、どうでしょうか?

この時、陽極電圧計にふらつきはありますか?
ちょっとボリュームを上げただけで陽極電圧がピョーンと跳ね上がるようなことはありませんか?
このような場合は、ここからの内容とは別の異常が考えられます。
そのような事例は、また別の機会にご紹介致します。

まだ電流計はふれていませんか?

さて、2つのメーター(陽極電流計、格子電流計)はまだ振れていませんか?
では、3kVくらいまであげましょう。

いかがでしょうか?

やはり振れていませんか?
このあたりまで、陽極電圧を上げても他の2つのメーターが振れてこない場合、下図をみてください。

電圧計は振れているということは…

陽極電圧計が振れている(陽極電圧が上がっている)ということは、

ここまでの状態として、一次電源の3相がメインブレーカと電磁開閉器を通り、サイリスター(もしくは、スライドトランス)により電圧が調整され、メイントランス(陽極トランス)へ電力が供給され、ほぼ正常に昇圧し高圧整流素子で整流されている状態です。陽極電圧計が振れているということは、ここまで正常にきていると考えられるわけです。

発振回路をみていきましょう

この後、発振回路へと繋がるわけですが、2つのメーターが振れていないということは、
イコール 『発振していない』 ということなので、以下のような原因が考えられます。

発振回路が形成されないため、陽極電流が流れず格子電流も流れない。
前段の高圧整流素子で整流された電流が発振部へと流れていきます。
一般的な発振部の回路を下図に示します。

左側の高圧整流部から発振部に入ってきて、右側の加熱コイルまでの間、
どこかで電気の流れが阻害されているために陽極電流が流れなくなってしまっているということです。

さてそれでは異常箇所を追いかけるにはどこから手をつけましょうか…
機械的、外観では接触しているように見える接合部も、電気的には繋がっていないとなると、
全てが疑わしく思えてきます。
ひとつひとつ接合部を外してみていくのもひとつの解決策ではあります。
しかし、生産が遅れる!止まってしまう! という場合は、いち早く異常箇所を見つける必要があります。

異常箇所の切り分け

切り分けて追いかけていくのが解決への近道です。
今回の事例では、まず発振機の中なのか外(高周波変流器+加熱コイル)なのかで分けます。
というのも、外(高周波変流器+加熱コイル)は汚れやすかったり、冷却が不十分であったり、
不良になりやすい箇所が多いのです。そして見た目には接触しているように見える箇所でもあります。
中か外かを見極める方法として良い方法があります。

少々 手荒ですが…

少々、手荒な方法ではありますが、それは、下図の赤線のように発振機からの出力部分からアースに短絡してしまう方法です。

具体的には、下の写真のような形にします。

このチェックを行うにあたり気を付けないといけないことは、

注意点

『発振機からの出力を短絡しているため、
一気に陽極電流が流れてしまう可能性があるということです』

手 順

1-1  出力調整ボリュームを『ゼロ』にしぼります。
1-2 いつでも出力をOFF出来るようにしながら、加熱をONにします。
1-3 出力調整ボリュームをいつもより慎重にゆっくりと上げていきます。
1-4 陽極電圧計の針が少し振れた時、他のメーターの状態はどうでしょう?。
1-5 ここで陽極電流計、格子電流計の針が振れてくると、異常箇所は高周波変流器か加熱コイルということになります。
1-6 少しあげても、陽極電流計、格子電流計の針が振れない場合は、発振機の中の状態が異常であると考えられます。

(1-5)の状態であれば、発振機から外側の異常なので、
高周波変流器と発振機をつないでいる銅板や銅帯を外して接触部を細かいサンドペーパーやスチールウールで
磨いたり、高周波変流器から加熱コイルを取り外し接合部を磨いてみて下さい。
交互切替器で高周波変流器2台を切り替えて使用されている場合は、交互切替器の接点部分や接続端子部分も
同じように磨いて下さい。
上記の整備をおこなえば、ほぼ復旧すると思います。

高周波の電流は表面を流れます。太い電線で接続しても、高周波の電流は電線の中心部は流れず、電線の表層部を流れるのです。たくさんの電流が流れているところは発熱しやすい為、水冷や空冷を行いますが充分に冷やせない状況が起こると、接合部では特に熱を帯び、表面が変色してきます。 上の写真のような状態です。 これは、加熱コイルのリード部ですが、このように一度 変色してしまうと、自然に良くなることはありません。変色して電気の流れが悪くなるということは、抵抗が増えるということでもあるので、ますます発熱量が増え、変色が進み…  まさしく 負のスパイラル状態というわけです。 加熱不良や「出力設定以下」のアラームが出ても外観は接触しているように見えているので見逃してしまい、『陽極電流計と格子電流計が振れていないのですが…』  と
(1-6)の状態である場合は、発振機内部の異常が考えられますのでもう少し探って行く必要があります。

発振機内が原因と考えられる場合

(1-*)のチェックをパスしたということは、電流計が振れない原因は発振機の内部にあるということです。

 ※ ここからのチェックは、発振機の電源を切ってから10分程度時間をおいてから行って下さい

手 順

2-1 高圧整流素子から陽極抵抗(ホーロ抵抗:緑色のφ30筒状)まで高圧ケーブル(ネオンケーブル)で繋がれている部分にゆるみや断線はないでしょうか?
2-2 陽極抵抗からチョークコイルまで高圧ケーブルで繋がれている部分にゆるみや断線はないでしょうか?
2-3 チョークコイルに焼損・断線はありませんか?
2-4 チョークコイルから結合コンデンサまでの高圧ケーブル(銅パイプの場合もあります)にゆるみや断線はありませんか?
2-5 結合コンデンサは装置により様々な形状の物が使用されますが、下の写真のようなコンデンサの場合、端子部が外れてしまう事故もあるのでチェックして下さい。


2-6 結合コンデンサから発振管プレートまでの高圧ケーブル(銅パイプの場合もあります)にゆるみや断線はありませんか?
装置によっては、寄生振動防止のコイルとエレマ抵抗が付いている場合がありますのでその接続部もチェックして下さい。特にエレマ抵抗は発熱しますので端子部は注意深くチェックして下さい。
2-7 陽極コンデンサから陽極コイルまでの接続はどうでしょうか? この部分は銅帯で接続されていると思いますが銅帯の焼損や変色が酷くなっているところはないでしょうか?
2-8 陽極コイルから出力端子部の間で、ゆるみや焼損している部分はないでしょうか?
上記で発振機内部のチェックは完了ですが、少しでも怪しい部分は、一度取り外して接触面を磨いてから取り付けて下さい。
※ 発振管が異常の原因である場合もありますが、この症状ではレアケースかと… もし予備の発振管があれば交換してみるのも手の一つではあります

(2-3)の事例として下記のような事がありました。 チョークコイルの一部が焼損して断線してしまっています。 おそらくそれまでに堆積していたホコリやゴミがチョークコイルを短絡させてしまい焼損してしまったものと考えられます。特に梅雨の時期などに多い事故の一つです。

さてこれで治りましたね?

え? まだ、陽極電流針、格子電流計の針が振れない?

それは興味深い! お手数ですが、下記まで 是非 ご連絡下さい。

電話 075-922-7980   (担当:町野)

FAX 075-922-7982

E-mail : machino@akai-ele.com

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