<電食(電蝕)>
『電気が食う』、もしくは『電気が蝕む』 と書いて 電食(電蝕)ですが、
「え?何のことかさっぱり!」というのが電食の印象だと思います。
この 『電食』 という現象ですが、
直流電圧が印加されている部品から水をつたって(正規の電気のルートではないところを)電気が流れ、金属がイオン化して溶出する現象です。高周波誘導加熱用の発振機では、下図のように 普通の電気の流れは赤い線の流れですが、水冷している
電子管のジャケットにも電圧がかかっているため、ここを流れていく冷却水にも青い線の様に電流が流れてしまうわけなのです。
そして その水冷ジャケットのノズル部分がイオン化して水に溶出しボロボロになっていくということです。
下の写真は、電子管ジャケットの真鍮製ノズル(ホースニップル)です。
元々は、こんな ↓ ホースニップルですが、 電食した部品は、この様 ↓ になります。
普段 水が流れている ホースニップルですが、 徐々に徐々に、電気に食われて脆くなり、
ある日突然 ホースが抜け あたり一面水浸しとなるのです。
このような電食を防ぐ方法として、一番 確実なのは流れている水を『超純水』 にすることですが、
設備や、ランニングコストの面で現実的でなかったりします。
他には、下図のように餌(コロージョンターゲット)を付けてやる方法というのもあります。
ホースニップルと同電位にした金属棒(SUSか真鍮が良いと思います)をホースニップルより長めにセットし、
電食がまずこの金属棒から進むようにするとホースニップルの電食の進行を遅らせることが可能です。
しかしながら、この方法は金属棒の設置の為 構造が複雑になることや水の流れを阻害する構造となってしまい、
フィルターの設置されていない冷却水経路だったりすると、この構造物にゴミが溜まり詰まってしまうことにもなります。
それぞれの方法に一長一短があるので、オールOK!といかないところがもどかしいところです。
突然の事故に見舞われないようにするためにも、日常、月例点検で監視を行い回避する方法が一番 現実的
且つ安価な方法かもしれません。
難しい事はありません、ホースとホースニップルの境界に光を当てて、状態を見るだけです。
↓ こんな感じで… (この写真は問題の無い状態です)
このチェック方法だけでは駄目なことが… こちらから→
↓ こうなってくると注意が必要でしょう。 交換したほうが良いかもしれません。
一気に脆くなるわけではないので、1ヶ月に一度くらいの点検でOKだと思います。
※ 電食について書かれている書籍が見つけられていない(あまり無いような)のですが、
私は、「目で見てわかる金属材料の腐食対策」(日刊工業新聞社)藤井哲雄先生の著書を参考にさせていただきました。