肝心要
高周波誘導加熱装置において、肝心要のところは、なんといっても
「加熱コイル」だと思います。
そしてもっとも汚れ易くて、 もっとも手を出したくないのも
「加熱コイル」ではないでしょうか?
また長期休暇の後になぜか起こるトラブルの原因も「加熱コイル」が多かったりします。
そこで、今回は「加熱コイル」のお手入れについて書いていきます。
お手入れで重要な3つのポイント
- 当然のことながら、電源装置の一次電源は必ず切り、15分程度経過した後に作業を行うこと。
- 給電端子部に傷を付けないこと。
- 加熱コイルの形状・ワークとの位置関係を変えないこと。
ビリビリ! え?感電?
ひとつめの一次電源を切るのは、当たり前のことなのですが 「15分程度経過した後」というのはなぜでしょう?
それは電源装置の中には、たくさんのコンデンサーを使用しているので電源を落とした直後はまだコンデンサにチャージ電荷が残っていてそれに触ると感電する可能性があるためです。 ですから、一次電源を切ったからすぐにパネルを開けて内部に手を触れることは、とても危険です。 装置によってはアース棒が用意してありますので、電荷の残っていそうなところに予めアース棒をあててから作業を行うようにして下さい。
※ 「これがあるから手を出したくないんだ…」 そうですね おっしゃるとおりです。
そんなときは、この様な技もあります → こちらから
傷口から…
二つ目に給電端子部(リード板)に傷をつけないように気を付ける必要があります。これは、給電部に傷がついてしまうと
- 傷ついた部分からは、給電できなくなり
- 接触面積が減り 接触抵抗が増え
- 接触抵抗が増える事で、その部分は発熱してしまい
- 給電部の表面が変色(酸化)してしまいます。
- 方面が酸化してしまっているので接触面積が減り 接触抵抗が増え
- …
と、傷口がひろがり負のスパイラルに陥って、最終的には全く電気が流れなくなってしまうケースもありますので、手入れの際は 傷を付けないようにしないといけません。
形状・位置関係が大事!
三つ目は、
加熱コイルの形状とワークとの位置関係を変えないことですが、なぜこれにが大切かといいますと、
下の式を見て下さい。
ビオ・サバールの法則より
\( dH = \frac{Idlsinθ}{4 \pi r^2} \)
この式は、導体に電流が流れた時に角度θの方向にr離れた位置において生じる磁界の強さを示す式です。 距離が離れると二乗に反比例して磁界が弱くなるということです。誘導加熱はこの磁界により被加熱物内に生じる渦電流が…
眠くなりそうなので
端折ってまとめると『ワークと加熱コイルとの距離が離れると二乗~三乗に比例して発熱効率が悪くなる』と考えて下さい。
なので、被加熱物と加熱コイルの位置関係にズレが生じるとそれまで正常に加熱できていたものが、温度が上がらなくなったり逆に上がり過ぎたりする可能性もあります。
※ ロウ付けや焼入れ加熱の場合は、特に注意が必要です。
以上の事に、気をつければ加熱コイルのお手入れは、さほど難しいものではありません。
次回は、実際の作業をご紹介します。
(※こちらからどうぞ)